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喫煙により冠動脈はどうなるか? 冠動脈疾患(9)

メディカルコラム

望月吉彦先生

更新日:2016/09/12

1950年代までは「タバコは健康に良い!」?

喫煙と心臓血管系の病気との関係は、よく知られるようになってきました。
例えば、喫煙者は非喫煙者に比して心筋梗塞(冠動脈が閉塞することにより発症)の発症率が2-6倍も高いのです(幅があるのは、喫煙開始年齢、喫煙年数、性別などの要因によります)。
あまり知られてはいないのですが、禁煙して3年が経てば心筋梗塞発症率は非喫煙者と同等まで下がります。覚えておいてください。

昨今「タバコの害」は常識のような話になっていますが、1950年代までは「タバコは健康に良い!」とも言われていました。当時、ようやく、肺がん、舌がん、喉頭がん、咽頭がん、膀胱がんの発症率が喫煙者では非喫煙者よりもかなり高いことが知られるようになっていましたが、タバコと心臓血管系の病気との関係はよくわかっていませんでした。
しかし、アメリカにある「フラミンガム」という町の住民を長期に亘って観察した結果、喫煙と動脈硬化性疾患(脳卒中、心筋梗塞など)との密接な関係が、1960年頃に明らかになりました(参考文献1)。喫煙者では心筋梗塞、脳卒中など「動脈硬化性疾患」に罹る率が非喫煙者よりも2-3倍くらい高いことが解ったのです。
タバコは各種のがんを発症させるだけではなく、動脈硬化も進行させることが明らかになりました(フラミンガム町を知らない医師はいません。心臓病研究で有名な町です。近いうちに、この町で行われた(今も行われている)有名な心臓病研究についてご紹介しましょう)。

タバコを吸うと冠動脈はどうなるか

喫煙が動脈硬化を引き起こすメカニズムに関しては様々な研究が行われ、その機序は次第に明らかになりつつあります。タバコには、身体に対して有害にはたらく物質が7000種類も見つかっています。本稿ではあまり細かい議論に立ち入らず、タバコを吸うと心臓に栄養を供給している血管(冠動脈)がどうなるかをお示しします。

以前、心臓カテーテル検査中にタバコを吸わせて血管がどうなるかを検討した論文があることを書きました。その論文を紹介いたします。

「Cigarette smoking during coronary angiography: diffuse or focal narrowing (spasm) of the coronary arteries in 13 patients with angina at rest and normal coronary angiograms.」という題名で、 Catheterization and Cardiovascular Diagnosis という雑誌に1986年に掲載された論文です。題名の翻訳です。

「冠動脈造影中に患者さんに喫煙をしてもらい冠動脈がどういう変化を示すかの検討を行ったところ、喫煙により冠動脈は全体的に狭くなるか一部が狭くなった。喫煙により血管が“けいれん”して狭くなることがわかった。安静時に狭心症があり、喫煙しながらの冠動脈造影に先立つ冠動脈造影で冠動脈が正常であった13名に対しての検討結果である。」(注:逐語訳ではありません。)

こういう血管の“けいれん”を医学用語では“攣縮(れんしゅく)”と言います。難しい言葉ですね。本稿では“けいれん”を使うことにします。

この論文では、狭心症が疑われるけれど、冠動脈造影では、狭い箇所が無い、そういう患者さんが対象です。こういう患者さんの冠動脈造影を行っている時にタバコを吸ってもらうと冠動脈はどうなるか?を検討したという研究です。今なら許されないでしょうが、こういう研究があって、タバコの血管への影響がわかり「今」があるとも言えます。

図1-a
図1-a:患者Aさんの右冠動脈造影像です。どこにも狭い箇所はありません。

図1-b
図1-b:この患者Aさんにタバコを吸ってもらいながら行った右冠動脈造影像です。
矢印部分の冠動脈が強烈に収縮しているのがわかると思います。もちろん、胸痛が出現しています。

図2-a
図2-a:患者Bさんの左冠動脈造影像です。どこにも狭い箇所はありません。

図2-b
図2-b:この患者Bさんにタバコを吸ってもらいながら、行った左冠動脈造影像です。
矢印部の冠動脈が狭くなり、その先の冠動脈にはあまり造影剤が入っていません。
タバコにより血管が“けいれん”しているからです。胸痛が出現しています。

図3-a
図3-a:患者Cさんの左冠動脈造影像です。どこにも狭い箇所はありません。

図3-b
図3-b:この患者Cさんにタバコを吸ってもらいながら、行った左冠動脈造影像です。
左冠動脈全体に造影剤があまり入っていきません。左感度脈全体が細くなっています。
タバコにより左冠動脈全体が“けいれん”し、胸痛も出現しています。

タバコを吸うと血管が“けいれん”する

この研究により、タバコを吸うと血管が“けいれん”することが解りました。タバコを吸うことで血管は細くなり、心臓に栄養や酸素が行かなくなるので、胸痛を生じます。
喫煙者全員の血管に、いつも、こういうことが起きているわけではありません。しかし、タバコを吸わなければ、こういう「血管のけいれん」は生じません。
このような“けいれん”が続くと血管は損傷を受けます。そのため、喫煙者は非喫煙者よりも圧倒的に動脈硬化の進行が早いのです。

喫煙をしている方には禁煙を強くお勧めします。
前述の如く、禁煙すれば、心筋梗塞発症率は劇的に低下します。

次回は、2020年東京オリンピックでのタバコ問題についてご紹介します。

【参考文献】

  1. Summary of recent literature regarding cigarette smoking and coronary heart disease. Circulation 1960; 22:164-166.
  2. フラミンガム町について:フラミンガム心臓研究の舞台となった町の解説です。
    http://www.epi-c.jp/e201_1_0001.html
  3. Cigarette smoking during coronary angiography: diffuse or focal narrowing (spasm) of the coronary arteries in 13 patients with angina at rest and normal coronary angiograms.Cathet Cardiovasc Diagn. 1986;12(6):366-75.

望月吉彦先生

望月吉彦先生

所属学会
日本胸部外科学会
日本外科学会
日本循環器学会
日本心臓血管外科学会
出身大学
鳥取大学医学部
経歴
東京慈恵会医科大学・助手(心臓外科学)
獨協医科大学教授(外科学・胸部)
足利赤十字病院 心臓血管外科部長
エミリオ森口クリニック 診療部長
医療法人社団エミリオ森口 理事長
芝浦スリーワンクリニック 院長

医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック
東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング1階 プラザ 111 内
TEL:03-6779-8181
URL:http://www.emilio-moriguchi.or.jp/

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