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日本勢も大活躍の「カルシウム拮抗剤」冠動脈疾患(7)

メディカルコラム

望月吉彦先生

更新日:2016/06/06

狭心症の治療薬のひとつ、カルシウム拮抗剤

以前のコラムでリンゲル液の組成について、お伝えしました。
文中、心臓がより良く動くためにはカルシウムが必要であることをリンガー医師が明らかにしたことをお示したのを覚えていらっしゃるでしょうか?
今回は、そのカルシウムに関するお薬を紹介したいと思います。

心臓

冠動脈が細くなって生じる狭心症の治療薬のひとつにカルシウム拮抗剤というお薬があります。カルシウムというと「骨」が連想されますね。骨を作るカルシウムとは別に血液中を流れるカルシウムと心臓の細胞や血管の細胞でのカルシウムに作動するお薬の話です。前述の如く、カルシウムは心臓を動かすには必須の物質であることがリンガー医師の研究であきらかになりました。また、カルシウムは動脈を収縮させることも明らかになりました。そのカルシウムの作用を弱めようというのが今回お話しする「カルシウム拮抗剤」です。

少し難しい話です。「カルシウム拮抗剤」が体の中で、どのように作用するかを、できるだけ簡単に説明します。
「カルシウム拮抗剤」は血管平滑筋細胞膜上や心筋細胞膜上にあるカルシウムチャネルを抑制し、細胞外から細胞内へのカルシウムイオンの流入を減少させます。本来なら「カルシウムチャンネル拮抗剤」と呼んだ方が良い(注:英語では正しく“calcium channel blocker, CCB”となっています)のですが、日本では「カルシウム拮抗剤」と言い習わしています。
それはともかく、要するに、血液中を流れるカルシウムは血管平滑筋細胞に入ると血管を収縮させますし、心筋細胞内に入ると心筋を収縮させます。カルシウム拮抗剤はこの細胞内に流入するカルシウムをブロックするので、心筋の収縮力を弱め(心臓を保護するように弱めるという意味です。誤解無きように)、血管の収縮を抑制する、そういう作用があります。血管の収縮抑制=血管の拡張ですから、この系統のお薬を使うと血圧も下がります。(注:“カルシウム拮抗剤”というと、カルシウムと拮抗すると誤解され骨がもろくなると思われるかもしれませんが、骨の代謝にカルシウム拮抗剤は全く関与しません。ただし、骨のカルシウムと動脈硬化、高血圧には関係があります。注3参照。)

カルシウム拮抗剤は、その薬理作用から、3つに分類されます。

  1. ヒドロピリジン系:主に血管に作用する(血圧も良く下げる)
  2. ベンゾチアゼピン系:心臓と血管の両方に作用する
  3. フェニルアルキルアミン系:主に心臓に作用する

の3つに分類されます。

1. ヒドロピリジン系

1. ヒドロピリジン系は、主に血管平滑筋細胞に作用するので降圧剤として使われます。ニフェジピン(アダラート®)や ニカルジピン(ペルジピン®)や アムロジピン(アムロジン® や ノルバスク®)がその代表です。その代表は、今でもとてもよく使われるニフェジピン(アダラート®)です。

そのニフェジピンは日本と深い関係があります。ニフェジピンは元は、ドイツのバイエル社で発見された物質です。 1966年のことです。バイエル社は、自社内だけでなく、日本人研究者にも「ニフェジピン」の研究を要請します。この辺りの事情はよく解りません。その結果、東北大学医学部薬理学教室の橋本虎六教授のグループは、ニフェジピンに強力な冠血管拡張作用があることを1968年に見いだしています。
1969年には日本医科大学の木村栄一教授がニフェジピンには「冠攣縮を抑制する作用があること」を発表します。
1972年には、金沢大学医学部第二内科村上元孝教授がニフェジピンの降圧効果を世界に先駆けて発表します。

というわけで世界中で広く使われているニフェジピンは、発見はドイツですが、臨床応用に至る道筋は日本の研究者が作っています。ちょっと、誇らしいことです。ニフェジピンは今でも、現役バリバリのお薬です。

ヒドロピリジン系には多くの薬がありますが、その内のひとつニカルジピン(ペルジピン®)は日本製です。山之内製薬(現アステラス製薬)が1976年に創薬したお薬です。今でも、世界中で狭心症、高血圧の治療薬として使われています。

2. ベンゾチアゼピン系

2. ベンゾチアゼピン系は、血管平滑筋、心筋細胞の両方に作用します。代表は、ジルチアゼム(ヘルベッサー®)です。ジルチアゼムは日本で創薬されました(田辺製薬(現:田辺三菱製薬)が1973年に創薬)。抗狭心症作用、抗不整脈薬作用、降圧薬作用を併せ持つので、広く世界中で使われています。
ドイツ語のHerz(心臓)と bessen(良くする)からヘルベッサーと名付けられています。心臓を保護し、血圧もそこそこ下げてくれる、とても良いお薬です。

3. フェニルアルキルアミン系

3. フェニルアルキルアミン系は、主に心筋細胞に作用します。代表は、ベラパミル(verapamil:ワソラン®)です。Vasolan=ワソラン®は、血管を拡張する=Vasodilatorから命名されましたが、現在では血管拡張薬というよりは頻脈性不整脈の治療薬として使われることが多いですね。
ベラパミルには、多少、面白い歴史があります。ベラパミルの元は、アヘンの原料であるケシの研究から生まれたのです。
注:アヘンとはケシから得られる乳液のような物質です。ケシの実にキズをつけると白い液が流出するそうです。

写真:ケシから流れ出る「アヘン」

アヘンには、麻薬として作用があるのでアヘン戦争で知られるように、その取り扱いには注意が必要です。日本では、栽培が許されていません。江戸時代には、日本でも栽培されて、主に医療用(麻酔、鎮痛)に使われています。

この写真のようにアヘンを作れるケシは、英語でOpium poppy、学名(ラテン名)を Papaver somniferumtといいます。アグネスチャンの歌で有名な「ひなげし」も芥子の花の一種ですが、ひなげしからはアヘンがとれません。Papaver somniferumtというケシはアヘンを作ることができます。このアヘンから、今から100年以上前に3種類のアルカロイド(天然由来の有機化合物のこと)が分離、生成されました。1.モルヒネ(morphine) 2.コデイン(codeine) 3.パパベリン(papaverine)の3つです。この3つとも、100年以上に亘って、大活躍するお薬です。アヘン5000年に亘る医療薬としての歴史があるのですから、それも当然かも知れません。なお、パパベリン(papaverine)はケシの学名である“Papaver somniferumt”から命名されています。

モルヒネ、コデインは麻薬作用を持ちますが、パパベリンは麻薬作用を持っていません。血管拡張作用、気管支拡張作用が認められ、今も普通に使われています。1968年、このパパベリンから、ドイツ人科学者Ferdinand Dengelが合成したのがベラパミル(verapamil)です。さらに、さかのぼれば、パパベリンは1848年(嘉永元年)にドイツ人大学生Georg Merckが発見しています。この名前に一寸聞き覚えがあるかと思います。Georg MerckはMerck社(現:MSD社)の創始者であるEmanuel Merckの息子さんです。

閑話休題、カルシウム拮抗剤は、心臓手術時の心筋保護液、心停止液にも添加されます。心臓を止めている間に心臓の手術をするのですが、この際、心筋が収縮状態になっていると手術後に著しく心筋障害を引き起こします。また、冠動脈を拡張させる作用もあるので、カルシウム拮抗剤を心筋保護液に添加することで、心臓手術の周術期心筋梗塞を劇的に減少させました。

というわけで、カルシウム拮抗剤は、まとめると

(1)血管を広げる作用
(2)心筋収縮を抑制させる作用
(3)心筋保護作用

を併せ持つとても良いお薬です。そういうわけで、狭心症治療に、高血圧治療に、不整脈治療にと、大活躍しています。多くのカルシウム拮抗剤が使われていますが、そのうちの二つは日本で作られ、世界中で使われていることはもっと知られて良いと思っています。

  • 注1:カルシウム拮抗剤とグレープフルーツを一緒に摂取するとカルシウム拮抗剤の作用が強く表れ、血圧が過度に低下したりすることがありますので、ご注意ください。
  • 注2:マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)と併用した場合、カルシウム拮抗剤の血中濃度が上昇し、血圧が下がることがあると報告されています。
  • 注3:カルシウム摂取量が少なくなると、骨から血中にカルシウムが溶出して、動脈硬化の原因の一つになります。カルシウムが多く含まれている水を飲む地域は、脳卒中が少ないことを岡山大学農学部小林純名誉教授が世界に先駆けて発表しました。

望月吉彦先生

望月吉彦先生

所属学会
日本胸部外科学会
日本外科学会
日本循環器学会
日本心臓血管外科学会
出身大学
鳥取大学医学部
経歴
東京慈恵会医科大学・助手(心臓外科学)
獨協医科大学教授(外科学・胸部)
足利赤十字病院 心臓血管外科部長
エミリオ森口クリニック 診療部長
医療法人社団エミリオ森口 理事長
芝浦スリーワンクリニック 院長

医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック
東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング1階 プラザ 111 内
TEL:03-6779-8181
URL:http://www.emilio-moriguchi.or.jp/

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