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「細菌」と「ウイルス」と「私(持論)」

大人の健康情報

望月吉彦先生

更新日:2016/05/23

頭を悪くするウイルスが発見される!?

承前、前回の最後に「頭を悪くするウイルスが人の咽頭から発見される」論文が2014年11月に発表されました、と書きました。40%の人はこのウイルスに感染しているらしいという驚きの話の続きです。
Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Nov 1;111(45):16106-11.に載っています。Proc Natl Acad Sciは、通称「プロナス」という科学誌です。
NATURE、SCIENCE、CELL に次いで掲載が難しい雑誌です。実は一度、私も載った(共著者ですが)ことがあります!これは名誉なことでした(プチ自慢)。
それはともかく、「頭を悪くするウイルス」に関する論文の題名は、「Chlorovirus ATCV-1 is part of the human oropharyngeal virome and is associated with changes in cognitive functions in humans and mice.」です。この論文の要旨を簡単に紹介します。

この論文を書いたのはジョン・ホプキンス大学の研究者です。彼らは全く別の研究をしている時、人間の喉の中に、このウイルスがいる事を、偶然、発見したのです。また『セレンディピティ!』
健康な被験者の咽頭から発見されたさまざまな物質のDNAを調査したところ、通常は緑藻(りょくそう:いわゆる“も”)に感染するウイルス「ATCV-1」のDNAと一致している物質があるのを発見します。
この藻類ウイルスは、これまで人間には無害だと考えられていました。ところがこのウイルスが「感染している40%の人」は、「感染していない人」に比べて10%ほど認知能力が低下していたのだそうです。ネズミに感染させるとやはり認知能力の低下が見られたとも書いています。これが本当なら「○カは感染(うつ)る」は、真実かもしれません。まだまだ多くの検証が必要だと思いますが、これは大変面白いですね。あまり緑藻があるところには近づかない方が良いかもしれません(現時点では、冗談です) 。

緑藻

そもそも風邪とは?ウイルスと細菌の違いとは?

閑話休題。
風邪(感冒)は、実に嫌な病気です。通常ヒトはその生涯で200回風邪に罹ると言われています(参考文献7)。そもそも風邪ってなんでしょう?風邪の定義はさまざまですが基本的には「ウイルスによって生じる上気道炎」です。原因となるウイルスの代表的なのは「ライノウイルス」や「コロナウイルス」です。このほかに、夏を中心に腹痛、下痢などお腹の症状を伴いやすい「エンテロウイルス」、「エコーウイルス」や「コクサッキーウイルス」。春・秋のシーズンの風邪に多い「アデノウイルス」と「パラインフルエンザウイルス」。冬に多く、子どもに重症の肺炎を起こすことのある「RSウイルス 」、「インフルエンザウイルス」などがあります。

「ウイルス」と「細菌」とは違います。お解かりになりますか?
「ウイルス」は「細菌」の1/20から1/200くらいの大きさです。単独では増殖できません。宿主が必要になります。「ウイルス」はタンパク質の殻とその中にDNAかRNAしか持っていません。そのDNAやRNAを細胞に感染させて繁殖します。要するに、「ウイルス」と「細菌」はかなり生物としての性質が違います。そもそも、「ウイルス」が生物かどうかさえ定まっていません。

ここからが今号の本題というか。『随筆』ということで、私の「診療における持論」を書かせていただきます。
これは、あまり知られていないけど本質に迫る話です!皆さんも考えてみてください。

風邪を引くと多彩な症状が出ませんか?咳、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、痰、発熱、頭痛など。この多彩さこそ、「ウイルス」が原因である証拠とも言って良いのだと思います。何故なら、「ウイルス」は単独では増殖できないために体内各所に到達し、その細胞に寄生してその部位で各々症状を出します。ですから症状があちこち出て多彩になるのです。

一方、「細菌」は単独で増殖できますから、基本的には体内の何処か一箇所で増殖します。「ウイルス」による風邪のように上気道炎+胃腸炎を併発するようなことを「細菌」は起こしません(AIDSのように免疫能が低下した場合は別です)。「膀胱炎を生じる細菌(ほとんどが大腸菌)」が、咳、痰、咽頭痛は起こしません!「腸炎をおこす細菌」、例えば腸炎ビブリオ菌や赤痢菌は上気道炎を起こしません!
「細菌」は自分が繁殖しやすい場所で増えて症状を発します。要するに多彩な症状を示すのは「ウイルスによる風邪」と思ってください。

ウイルスが原因の風邪には、基本的には抗生物質(抗生剤)は効きません。そもそも抗生物質は「細菌」に効果があるのであって、全く別物である「ウイルス」には効果がないのは当たり前でしょう。
そんなことを言っても「抗生剤を飲んだら治った」とおっしゃる方も多いのです。それは風邪が自然治癒する病気だからで、治る時期に抗生剤を飲むとそれで治ったと思えるのです。または、本当に“稀な”「細菌感染により生じた風邪」だった可能性もあります。例えば「ノドが痛いけど、そのほかは何とも無い」と言うときは、「細菌感染による咽頭扁桃腺炎」を疑います。
それであれば、抗生剤です。それも使う抗生剤はペニシリンが基本です。口腔内、咽頭内の菌は連鎖球菌がメインですから、感受性が高いペニシリンを選択するのが正しいのです。

第3世代のセフェム系抗生剤の使用は論外です。第3世代のセフェム系抗生物質は体への移行性があまり良くない=体にあまり入らないのです(ただし、ある種の感染症には特効薬ということはありますが)。
キノロンは抗菌力が強いので、使用期間は短い方がいいですね。長く投与すると体に必要な菌まで殺してしまいます。そうなると、本来存在すべき「常在菌」を死滅させたりするので、逆に厄介なことになります(女性の場合で言えば、膣内デーデルライン桿菌が死滅するのでカンジダが感染しやすくなります。そういう経験をされた方も多いのではないでしょうか)。

「常在菌」の話が出ましたので、少し「人間の常在菌」についての話を少々述べさせていただきます。
人体のさまざまな場所で「常在菌」が見つかっています。舌には約8000種、喉には約4000種、耳の裏には約2400種、大腸には約30000種、女性器の入口には約2000種も見つかっています。腸管には大腸菌、乳酸菌、ウェルシュ菌が“超”大量にいます。上気道から肺には肺炎桿菌、肺炎球菌などがいます。常在菌の数ですが、口の中には100億個、皮膚には一兆個以上、人間の体全体では数百兆いるだろうと推定されています。正に『人間(じんかん)到る処“バイキン"あり』です!

人間は、たくさんの常在菌と上手に共生しているのです。常在菌は我々の味方なのです。味方を殺すような抗生剤を必要も無いときに投与すると、前号で述べたように「耐性菌」を生じさせます。「美人は菌でつくられる」なんて言う本もあります。面白いです(参考文献9-10)。
オランダには「MRSAがいない」と言われているのをご存知ですか?オランダという国は、抗生剤の使用基準が国中で厳しく決められており、勝手に抗生物質を投与できないのです(参考文献8を参照ください)。
一方、日本ではどうでしょう?普通は病院内にいるMRSAが外来患者さんに見つかることが報告されるようになりました。それが市中MRSAで、大きな問題になっています。なにをか言わんやですね。

WHO(世界保健機関)は、世界中で抗生物質の適正な利用を呼びかける「抗菌薬啓発週間」(2015年11月16〜22日)をスタートさせました。日本でも国立国際医療研究センターの国際感染症センターが中心となり、医師に対しても含めて、適正使用を呼びかけています。要するに、抗生物質の使いすぎは止めようということです。

抗菌薬啓発週間

細菌には約2億年の歴史があり、700万年の歴史しかない人類が太刀打ちできるような生物ではないです。細菌の方が人間より賢く、強いのです!私は、抗生物質が本当に必要な時は投与します。しかし、本当に必要な時にきちんと「効く」ようにしておくためには、日頃からあまり抗生剤を乱用しないことです。「耐性菌」ができてしまえば、抗生物質が効きません。

さらに言えば、○○リ○、○ス○マ○クという○○○ライド系抗生物質は不整脈を引き起こすことが知られており、突然死の原因にもなっています。FDAはそれに関する勧告を出しています
抗生剤を使うことで不整脈死を起こすことがあるのだから怖い話です。もっと言うと、スタチン(血中コレステロールを下げる薬)を服用している方が上記○○リ○を服用すると、スタチンの怖い副作用発症率が上がります。横紋筋融解症の発症率が上がるのです。スタチンを服用している方で、抗生物質を飲まれる時はよくよく注意なさってください。

私は風邪症状の診療に当たる時、もし、抗生剤が必要と判断しても、その抗生剤の選択については非常に慎重にすることを心がけています。
皆さんも風邪症状で受診する時、自身の症状が如何なるものか考えて受診してください。安易に抗生剤を処方して貰って満足などしないようお勧めします。興味がある方は是非、下記の参考文献をお読みください。

それにしても面白いのはインフルエンザです。ある時期から急に患者さんの数が増えますが、暖かくなると、発症する方はゼロに近くなります。何かがあるのだと思います。自然免疫が多くの方に広まったとか、人間には解明されていないインフルエンザ繁殖条件があり、それが変わるのかもしれません。単純に温度、湿度だけなのでしょうか。スギ花粉が飛ぶとインフルエンザウイルスが弱るのかもしれません。冗談です。

世界的に風邪(カゼ)が大流行したのが1968年から1969年のことです。1968年6月に香港で発生し、翌年にかけて世界中で流行したインフルエンザでした。「香港カゼ」と名づけられました。世界中で50万人が香港カゼ(インフルエンザ)のために死亡しています。それから、50年以上、インフルエンザによるパンデミック(=世界流行)は生じていません。しかし、そろそろ強烈なインフルエンザのパンデミックが生じるかもしれません。1968年に比して、交通手段が圧倒的に発達していますから、強いインフルエンザが何処かで発生したら、あっという間に世界中に広まるかもしれません。

【参考文献】

  1. 予防接種は「効く」のか?ワクチン嫌いを考える (光文社新書): 岩田 健太郎著
  2. 99・9%が誤用の抗生物質 医者も知らないホントの話 (光文社新書) 岩田 健太郎著
  3. 感染症 中公新書 井上栄著
  4. もやしもん 1-13巻 石川雅之著 (モーニング KC)
  5. 絵でわかる感染症 with もやしもん (KS絵でわかるシリーズ) -岩田 健太郎 (著), 石川 雅之 (著)
  6. 感染症の世界史 洋泉社 石弘之著
  7. かぜの科学:ジェニファー・アッカーマン著:ハヤカワノンフィクション文庫:「風邪」についてのまとまった研究書です。
  8. オランダには何故MRSAがいないのか?―差異と同一性を巡る旅:岩田 健太郎 著
  9. 人体常在菌のはなし ― 美人は菌でつくられる:青木 皐 著 (集英社新書) 新書
  10. 第三の脳 ―― 皮膚から考える命、こころ、世界傳田光洋 著 朝日出版社

望月吉彦先生

望月吉彦先生

所属学会
日本胸部外科学会
日本外科学会
日本循環器学会
日本心臓血管外科学会
出身大学
鳥取大学医学部
経歴
東京慈恵会医科大学・助手(心臓外科学)
獨協医科大学教授(外科学・胸部)
足利赤十字病院 心臓血管外科部長
エミリオ森口クリニック 診療部長
医療法人社団エミリオ森口 理事長
芝浦スリーワンクリニック 院長

医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック
東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング1階 プラザ 111 内
TEL:03-6779-8181
URL:http://www.emilio-moriguchi.or.jp/

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