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脈がはやくなるタイプの不整脈とは?不整脈について(3)

メディカルコラム

望月吉彦先生

更新日:2015/12/14

前々回で、脈がゆっくりになるタイプの不整脈の話をしました。今回は、脈がはやくなるタイプの不整脈の話をします。「はやく」の意味は二つあり、一つは文字通り「脈がはやくなる」タイプ、もう一つは「予想される脈より、はやいタイミングで脈がでる」タイプです。

「ドキン」「どきどき」としたとき、脈は触れている?

自分で不整脈を感じたとき「ドキン」とか「どきどき」とか、そういう風に患者さんは症状を訴えます。そういう訴えの脈が「危険かどうか?」の判断ですが、その判定には「脈を触れること」がとても役立ちます。脈の触れ方は以前お伝えしました。ざっくり言うと「どきっと」感じた時に脈が触れるタイプの不整脈の多くは「上室性不整脈(じょうしつせいふせいみゃく)」です。
「どきっとした時に脈が触れないか触れづらいか触れない」タイプの不整脈は「心室性不整脈(しんしつせいふせいみゃく)」です。 どちらが怖いかというと、後者の「心室性不整脈」です。その診断には、前々回でもお示ししたように、24時間の心電図検査(ホルター心電図検査)が必要です。少しでもおかしいと思ったら、是非、検査を受けてください。人生の分かれ目になるかも知れません。

少しだけ、専門的な話になります。「上室性不整脈」「心室性不整脈」のお話をします。
「上室性」というのは心房(しんぼう)が発生源です。「心室性」というのは心室(しんしつ)が発生源になります。

図1:正常心電図
図1:正常心電図
図2:赤印が上室性期外収縮
図2:赤印が上室性期外収縮
図3:橙色印が心室性期外収縮
図3:橙色印が心室性期外収縮

図1は正常な心電図を示しています。
少しだけ、言葉の説明をします。これからのお話に「期外収縮(きがいしゅうしゅく)」という言葉が出てきます。耳慣れない言葉ですね。「期外収縮」というのは心臓の正常に動く周期以外に出現する不整脈のことです。それには「上室性期外収縮(じょうしつせいきがいしゅうしゅく)」と「心室性期外収縮(しんしつせいきがいしゅうしゅく)」があります。
図2は「上室性期外収縮」の時の心電図です。赤色矢印部分が上室性期外収縮を示します。
図3は「心室性期外収縮」の時の心電図です。橙色矢印部分が心室性期外収縮です。
一見して、普通の心電図波形と形が違うのがわかると思います。期外収縮の波形が正常波形と同一なのが「上室性期外収縮」でその波形が正常波形と大きく違うのが「心室性期外収縮」です。

期外収縮の「出方、発現の仕方」にはたくさんの種類があります。先ほど、上室性不整脈よりは危険と書いた「心室性期外収縮」ですが、実は健康成人の20−30%に見られます。多くは単発生で、その場合は危険ではありませんし、治療の必要もありません。治療が必要になるのは、単発性でも「数が多い場合」や、形の違う心室性期外収縮がたくさん出てくるタイプです。「数が多い?たくさん?」かどうかの判断には、くどいようですが、24時間心電図検査(ホルター心電図)が必要です。

上室性不整脈なら心配ないかというと、そういう訳でもありません。上室性不整脈でも数が多く、持続する時間が多いなら、治療を要します。その代表が、図4の上室性頻拍症(じょうしつせいひんぱくしょう)です。1分間に心拍数が150から200にも達しますので、かなりドキドキします。長く続くと、心不全を生じます。心臓がバテてしまうのです。原因は様々です。治療には抗不整脈薬投与が基本ですが、カテーテル治療を行うこともあります。

図4:上室戦頻拍症:150/分
図4:上室戦頻拍症:150/分

「心房細動」は珍しい不整脈ではないものの…

さて、ここまでお話ししたタイプとはまた別な不整脈があります。それは「細動(さいどう)」という不整脈です。細動とは、心臓から、てんでんばらばらに電気が放出されている状態です。オーケストラの演奏前に各楽器がてんでんばらばらに練習しているのと同じような状態です。どこから、電気がてんでんばらばらにでているかで、二つに分けられます。一つは心房から電気が出る「心房細動」(図5)、もう一つは心室から電気が出る「心室細動」です(図6)。

図5:心房細動
図5:心房細動
図6:心室細動
図6:心室細動

図5は「心房細動」の心電図です。
心房細動とは、右房、左房がてんでんばらばらに電気が放出されている状態です。心電図の基本波形である部分の波形は変わりませんが、その間隔は全くバラバラになっています。QRS波の前にある小さい波の形が千差万別ですが、大きい波の形は一緒です。心房細動の原因は加齢、弁膜異常などです。65歳以上方の8%に心房細動を認めますので珍しい不整脈ではありません。この不整脈「自体」で死亡することは滅多にありませんが、正常な脈に比して脳梗塞、手足の塞栓の発症リスクは2-7倍になるので、注意が必要です。
心房が文字通り細かく震えるので心房内で血液がうっ滞して心臓内に血の塊が出来ます。その塊が心臓から血管に流れ出て、頭(脳)に届き、脳の血管を詰まらせたり、手足の血管を詰まらせたりもします。脳の血管が詰まると重い脳梗塞を生じることが多いのも特徴です。
数多くの「心房細動が原因と思われる脳梗塞の患者さん」を診てきました。実は、“しっかり”と抗凝固薬による治療を行えば脳梗塞発症は予防出来ます。“しっかり”と抗凝固薬を服薬している患者さんで、脳梗塞を発症することは稀です。さて、心房細動自体への治療です。治療の基本は3つです。

  1. 出来るだけ慢性化しないようにする=心房細動が生じないようにする
  2. 心房細動が慢性化した場合は心拍数のコントロールをする
  3. 抗凝固薬の投与で脳梗塞予防を行う

この3つです。1の心房細動予防には、「抗不整脈薬の投与」「カテーテル治療」が行われます。2にはベータブロッカー、ジギタリス製剤の投与があります。3の抗凝固薬の基本はワーファリンというお薬です。
最近は、ワーファリン以外にも4種の新しい経口抗凝固薬が使えます。こういうお薬をきちんと服用していると、大きな脳梗塞を起こすことはまれになりますが、逆に血が止まりづらくなります。
これまで治療薬の主流であったワーファリンの効き目には個人差があるので、時々、採血をして薬が効いているかどうか確かめる必要もありました。また日常の生活のなかでは、ワーファリン服用中に納豆、クロレラ、青汁を食べる(飲む)とその作用が減弱されますので注意が必要でした。
上述の如く、“しっかり”ワーファリンを投与するのは結構、大変です。“しっかり”とワーファリンを使うのは循環器が専門の医師の「腕の見せ所」でもあります。
ワーファリンは安価です。その為もあり、世界中で多くの患者さんに使われています。
最近、使えるようになった抗凝固薬は、使用に際して定期的な採血は不要ですし、納豆などの食事の制限もありません。非常に使い易くなりました。しかし、ワーファリンに比し、高価です(10-20倍:幅があるのは比較対象となるワーファリンの必要量に個人差があるためです)。
これらの治療薬には各々の特性があるので、患者さんとよく相談して、使用しています。なお、金属性の人工弁が入っている患者さん及び弁膜症に伴う心房細動を認める患者さんにはワーファリン以外の抗凝固薬に塞栓症予防効果は無いのでワーファリンの内服が必要です。

二十歳の女性であっても危険な不整脈が…

次に、「心室細動」の話をします。

図6:心室細動
図6:心室細動

心室細動は図6に示す如く、全く不規則な心臓の動きを示します。心室が細かく振るえる(=細動)状態になるため、心臓から血液が拍出されません。それは心臓が止まったのと同じ状態です。つまり心室細動状態になると血液が回らなくなるのです。長く(数分から10分まで)そういう状態が続くと、たとえ後で心臓が動くような状態になっても、脳障害を起こします。

図7は、形の違う心室性期外収縮が多発しています。これは極めて危険な状態です。
図8は、図7から30分経った時に記録された心電図です。心室細動(=心停止)を起こしています。

図7:形の違う心室性期外収縮
図7:形の違う心室性期外収縮がたくさん見られます。
図8:心室細動を起こした時の心電図
図8:心室細動を起こした時の心電図(図7と同一の患者さん)

この患者さんは二十歳の女性です。基礎心疾患も無く元気に働いていました。しかし、風邪をひいたことによりウイルスが心臓に入り、「劇症型心筋炎」を引き起こして、このような不整脈を生じています。
最初は「動悸がする」、「苦しい」、「熱が下がらない」と訴えて近所の病院を受診しました。その時の心電図が図7です。「危険な不整脈が出ている」と判断され、私が以前勤務していた病院へ救急車で搬送されることになったのです。
しかし、病院到着1分前に心室細動になってしまいました。電気ショックをかけて心拍は再開しましたが、心臓の動きは極めて悪く、人工心臓を装着しての治療が必要になりました。
1ヵ月半後に心機能が回復しました。長く、厳しいリハビリの後、無事退院され、今では普通に生活し、結婚もされ、お子さんもいらっしゃいます。

回復した後、患者さん自身が図8の心室細動の状態になった時の事をよく覚えていると話してくれました。「病院が救急車の窓から見えたと思ったら、目の前が真っ暗になり意識がなくなった」そうです。怖いですね。人工心臓というのは、普通は左心室の補助だけ行いますが、この方は右心室も全く動かなくなってしまったので、左室と右室の両心補助という特別な補助を行いました。

図9はまた別な方の心電図です。74歳の患者さんです。

図9:心室細動を起こした時の心電図
図9:心室細動を起こした時の心電図

糖尿病、高血圧があり、ヘビースモーカーでした。急性心筋梗塞を発症しました。カテーテル検査で冠動脈に狭窄をたくさん認めたため、緊急手術(冠状動脈バイパス術)を行うことになりましたが、手術室に入って手術台に上った時に心室細動(=心停止状態)となりました。
手術室にいたので心マッサージを行い、そのまま、冠状動脈バイパス術を行い、幸い、助かりました。もし、心室細動が日常生活中に生じていたら、まず助かりません。まさに“運”ですね。

自分には不整脈なんて関係ないと思っていても

3回にわたり、不整脈についてお話をさせていただきました。
「自分には不整脈なんて関係ない」と思っている方も多いと思いますが、動悸を感じたり、脈が乱れるような感じを自覚したら、絶対に我慢しないで医療機関で相談してください。
不整脈の治療は、文字通り「日進月歩」です。お薬、カテーテルアブレーション治療、冷凍凝固治療、外科的治療などがどんどんと進んでいます。専門医にかかり、しっかりとした治療を受けられることをお勧めします。

【追記1】

最近、あちこちでAED(Automated External Defibrillator:自動式体外除細動器)という機械を見ると思います。簡単に言うと電気ショックを心臓に与える装置です。AEDは「心室細動」の治療に使います。くどいようですが、心室細動=「心臓停止状態」です。心臓停止状態が長引けば長引くほど、救命率は低下します。脳神経系の合併症も増します。一分一秒を争います。AEDの使い方の講習会などが開催されると思います。是非、使い方を覚えてください。実は簡単です。AEDの電極を胸に付けると機械が喋ります。機械の指示通りにすれば良いのです。救急隊が来る前にAEDが行われていると救命率が約2倍になります。

【追記2】

ここ数年、検診などで「ブルガタ型心電図」を指摘される方が結構いらっしゃいます。 1992年、スペイン人医師のブルガダ先生達(3兄弟!の連名論文です)は、特殊な心電図波形(ブルガダ型心電図波形といいます)を持ち、且つ“突然死”や“ポックリ病”をひきおこす家系があることを報告しています。 ブルガダ型心電図波形があり、且つ心室細動を生じる病気があることが解り、今はそういう病気を「ブルガダ症候群」と言います。多くは遺伝性ですので、ご家族の方で突然死をした方がいらっしゃる場合は注意が必要です。「ブルガダ症候群」の方は普段は何とも無いのですが、急に心室細動を生じます。しかし、これが大切ですが、「ブルガタ型心電図」=「ブルガダ症候群」ではありません。「ブルガタ型心電図」のほとんどは良性です。しかし、なかには、高率に心室細動を発症すると予測される心電図を示すこともありますので注意が必要です。「ブルガタ型心電図」を指摘されたら、ご相談ください。

望月吉彦先生

望月吉彦先生

所属学会
日本胸部外科学会
日本外科学会
日本循環器学会
日本心臓血管外科学会
出身大学
鳥取大学医学部
経歴
東京慈恵会医科大学・助手(心臓外科学)
獨協医科大学教授(外科学・胸部)
足利赤十字病院 心臓血管外科部長
エミリオ森口クリニック 診療部長
医療法人社団エミリオ森口 理事長
芝浦スリーワンクリニック 院長

医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック
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